2.印刷
寸法通りに裁断されたシートは、次に印刷工場へ回されます。軟質塩化ビニール(PVC)に対して行う印刷は、主にオフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、そして箔押しの5種類です。
(1) オフセット印刷
オフセット印刷は、平版印刷(=版に凹凸がほとんど存在しない印刷技術)の一種で、版のインキをゴムロールに写してからシートに印刷する方法です。
版と被印刷物が直接接触しないため、版が摩耗しづらく、大量ロットを印刷する場合に適しています。
「網点」と呼ばれる細かい色の点の集まりによる多色刷りに優れており、写真やイラスト、細かい文字表現などが得意です。
(2) グラビア印刷
グラビア印刷は凹版印刷の一種で、回転する版胴に刻まれた「セル」と呼ばれる凹みに入ったインキをシートに印刷する方法です。
版はクロムメッキ処理によって強固に作られており、壊れにくいため、大量ロットの印刷に適しています。グラビア印刷も、網点による多色刷りの方法をとっていますが、セルの深さによってインキの濃度を変えられるため、網点だけでは不可能な色の濃淡が表現できます。
(3) シルクスクリーン印刷
シルクスクリーン印刷は孔版印刷の一種で、メッシュ部分と固化した樹脂部分に分かれた版を使用し、メッシュ部分からインキを生地に押し出す印刷方法です。
刷り方がシンプルなため、様々な性質の素材に印刷することが出来、使用できるインキの種類も豊富です。またインキの盛りが厚くなるので、耐久性のある印刷が可能です。刷り方は、長台と呼ばれる作業台の上で手刷りをする方法と、半自動、全自動の機械を使う方法とがあります。半自動とは、印刷工程を機械で行い、乾燥工程を自然乾燥で行う方法です。
シルクスクリーンの版は網目部分の耐久性が低いため、オフセット印刷の版やグラビア印刷の版よりも壊れやすい難点があります。
上記の3つの印刷方法は、「特色」と呼ばれる、企業のロゴなどの特別な色や、蛍光塗料などのCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)では再現できない色の印刷が可能です。
(4) インクジェット印刷
インクジェット印刷は、高精彩な印刷が版無しで可能なところが利点ですが、印刷速度が遅いため量産に向かないことと、ポリ塩化ビニールへのインクの吸着が良くないことなどの欠点があります。
また、企業ロゴなど「特色」を使った印刷ができません。
(5) 箔押印刷
箔押し印刷は、凸版を使い熱とプレスでシートに箔フィルムを転写させる加工で、企業ロゴなどワンポイントの印刷に適しています。箔の種類は、金、銀、メタリックカラーやパール箔などがあります。
厚みのあるシートに箔押しをすると、通常その部分は凹みますが、反対に浮き出させる加工も可能です。
上記5通りの印刷の中から、製品の素材や、生産数量、使用される場所など様々な要素を考慮して、その都度最適な印刷方法を選択します。